初の法科大学院修了生向けシンポジウム

昨日(8月29日)に行われた環境法政策学会 法科大学院修了者・在学者向けシンポジウム「理論と実務の架橋―原子力損害賠償紛争の解決に向けて」 に、環境法政策学会の会員として参加しました。

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シンポジウムのプログラム(PDF)

テーマは原子力損害賠償紛争について。福島県でADRの聞き取り調査のボランティアに参加した早稲田大学法科大学院修了生のミニ報告に始まり、実際に損害賠償を求める被害者とのやりとりをしている弁護士や、文部科学省原子力損害賠償紛争解決センター仲介委員を務めていらっしゃる弁護士、環境法と民法に通暁している研究者と、報告者の属性や立場も様々でした。新米会員かつ専門が行政法・行政訴訟である私にはなかなか難しい議論が多かったのですが、フロアとの質問でのやりとりや、壇上の先生同士のやりとりで、この問題の広がりと深みの一端に触れることが出来たと思います。

環境法政策学会でも初の試み

議論の内容を詳細にメモしたわけではないので、ここでの紹介はむしろこの試みのほうにスポットを当てたいと思います。自分がかつて法科大学院生であった頃、あるいは修了してすぐの頃を振り返ると、学者同士、弁護士同士も立場や考え方の出発点の違いによって様々な議論になるということを、書面の上では見たことがあっても、目の当たりにすることはあまりなかったように思います。
また、学会主催のシンポジウムを開催した経緯として、高橋滋(環境法政策学会理事長・一橋大学教授)先生は、「若い世代にももっとこの学会に入って欲しい」ということを述べていらっしゃいました。私も環境法の講義を持つことがきっかけで学会に加入したのですが、過日行われた年次総会では、若手の方が(環境法を専門とする院生は別として)少ないように感じました。その危機感を反映してのイベントだったようです。
新規入会についてはこちらをごらんください。
入会には会員二名の推薦が必要なのですが、この日は理事がたくさん受け入れていました。シンポジウム修了後、早速入会申請をする方の列ができていました。

法と政策、両方を相手にするということ

また、環境法政策学会が、「法」と「政策」、両方に立脚しているのだということをひしひしと感じました。未曾有の大災害に対応するために、既存の法と法解釈で出来ることは限界があります。今回も、「損害賠償」というテーマ設定そのものにおける限界を指摘する会員もいらっしゃいました。ただ、立法に繋げるといっても、既存の枠組みでどこまでが出来て、どこから先ができないのか、あるいは、どのような観点が検討されるべきなのかを明らかにしておく必要があります。また、立法が動き出すまでの間にどんどん状況が悪化してしまうことにどのように対応するのかと言う問題もあります。過去の事象に対応するだけではなく、今目の前に生成している状況にも対応しなければならないという意味で、この学会が「法政策」学会であることを強く心に刻みました。

一修了生として・・・他の法科大学院の状況を聞く機会

会終了後には特に懇親の機会はなかったのですが、残っていた早稲田大学法科大学院の修了生や出身の弁護士の先生にお話を伺うことができました。選択科目や実務応用科目についての各法科大学院の状況は様々です。私自身も東京大学法科大学院で環境法を履修していたのですが、司法試験の選択科目とはしなかったため(労働法を選びました)、環境法選択で受験する予定の法科大学院生のお話を伺う機会は滅多になく、新鮮でした。お話させていただいた皆様ありがとうございました。